BE= Lab&Gallery

神野亜衣 写真展
「ワレワレは、」

2020.6/17wed〜6/28sun <6/22(月)・6/23(火)定休日>
open13:00-close19:00(最終日-18:00まで)

1週目、2週目で作品を入れ替えます。
ぜひ2週とも足をお運びください。


彼らはいつもそこにいる。
いままでの経験、思考、年齢、家族や資格の有無、読書経験、嗜好がそれぞれ違っていても同じ立場同じ給料でそこにいる。
そこは人間が育つ場所、と昔の人は言った。この言葉を、いまも昔もなにも変わらないと思うモノ、思わないモノ、それすら知らないモノによって、その業務は毎日繰り返されている。
彼らは毎日、様々な生活状況の人たちと向き合う。目の前のその人の生活が少しだけ豊かになるように自分たちの手・指をはたらかせる、と考えるモノ、考えないモノがいる。

“ヒトの皮膚感覚には、触覚、圧覚、温覚、冷覚、痛覚があり、皮膚感覚の感度は場所によって大きく異なる。指先には1㎡に100個以上の感覚点があり、人さし指や中指の腹の部分はふれた物の質感を感じやすい”、ということらしい。
さらに、“感覚の情報が脳に届いて意識的あるいは無意識的に処理される”とある。

同じ体のしくみの彼らはなぜ思考が一致しないのか?
指先という敏感な部分を使いシャッターをきるという行為から、普段は見えてこないその
人の思考というものを知ることができるのではないかと考えた。
彼らひとりひとりに使い切りカメラを渡し同じ期間をもうけ、自分自身の生活を撮影してもらった。
人間であり、ある土地の、ある職業の彼らの同じではない部分を知りたいと思った。


-前回の個展チキンハート(2018.6. オリンパスギャラリー大阪)、Adjustment(2019.6.BE=)に続く人体シリーズの3作目-

感じ方や考えはその人自身のものであり、他者によって左右されるものではありません。経験してきたこと、ものごとの捉え方、感じ方、年齢、家族の有無は人それぞれ。
考え方の違いはときに、その業務の捉え方の違いとしてあらわれます。「写真という芸術は、普段は見えてこない心の内側を隠すことなく写しだせると考えています。そんな心の内側、見えない部分、うす暗い場所が私にはとても綺麗に見えます」 というコンセプトのもと、自己の内側をテーマに、チキンハートからはじまる人体シリーズを作ってきました。 1作。2作では他者の視点を私は見ることができない、と してきましたが、3作目であるワレワレは、は他者の視点をその人自身も気がついていないその人の内側を写真によって表現できないかと考えました。

神野亜衣

過去の作品展
2019年「Adjustment」 (BE=)


〜 作品について 〜

作者を含めた図書館で働く方たち14人に使い切りのモノクロフィルムカメラで生活を撮ってきてもらった写真の展示です。この「ワレワレは、」というタイトルはどの図書館でも貼られている 【図書館の自由に関する宣言】からとっているそうです。宣言には “基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することを、もっとも重要な任務とする。” “図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る。”とあります。
自由に本を手に取れる事が当たり前のようについ思ってしまうけれど、“知る自由”を守るために働いてくれている彼ら。この言葉を聞くとその存在の尊さを感じさせられます。

– 展示ステートメントより抜粋 –
『図書館員とは自分という存在を主張するものでもない。自らつくりあげたプライドはときにその人自身の成長を邪魔するものになる。…図書館は、目の前のその人の生活が少しだけ豊かになるよう本を貸出する場所である。』
自分がどんな状況であろうと、毎日変わらないという顔をしてそこに立ち様々な生活状況の人たちと向き合う。このカメラを手渡したのが2019年の年末。そこから数ヶ月で世界の状況が大きく変わりました。過酷な状況でも必要としている人のために、変わらず手をはたらかせる彼らの日常は何を見て何を考えて撮ったのか。こんな時期だからこそ色々と考えさせられる展示となっています。

1週目はコンタクトシートを展示。
コンタクトシートとはネガをべた焼きしたものです。写真にプリントする前のチェックに利用したりするものなので、通常目にすることのない撮影に失敗したコマも見ることができます。カメラを通し相手の思考を覗き見させて貰っているようです。キャプションはそれぞれが図書館で働き始めた年を請求ラベルに表記。
2週目は選ばれたコマをプリントした展示です。